旅先でのマナーを考える
1997年 3月 4日公開
2001年 9月 1日更新

 旅行は大変楽しいものですが、だからといってハメをはずして何でもしていいわけでも、くつろぎきって好き放題をしていいわけでもありません。旅行にはマナーが存在し、それを守る限りにおいて旅先ですべての人たちが楽しめるもの、そのように私は思います。それができないような人に旅行をする資格はありません。「旅の恥はかきすて」なんて誰が言ったか知りませんが、本気でそんなことを考えているなら旅も観光もやめて下さい。
 ここでは私がいままで実際に見たものをもとにそのマナーの一例を考えてみたいと思います。

Chapter.1 自然を破壊しに来たの?
 自然の豊かなところに旅をしに来るのは、きっと自然に触れに来るんじゃないかと私は勝手に思っているのですが、自然を破壊しに来てるんじゃないかと思うような信じられない振る舞いをする(たぶん無知な)観光客の多さには閉口します。
 船に乗ると必ずといっていいほどいるのが船に群がる海鳥たちにえさをやる観光客。海にえびせん蒔かれても迷惑千万。鳥たちの自活能力も確実に奪っています。
 キツネにえさやるのも同じ。それでエキノコックスもらって死んでもそいつの勝手ですが、餌をもらいに人間に群がるようになったらキツネにとっても不幸なばかりか、他の観光客にも大迷惑。
 さすがにクマに餌をやる人は聞いたことがありませんが、山に登って余った食糧を山に埋めれば餌をやっているも同じ。そうして人間の味を知ったクマが人間を襲う問題グマになり殺処分されることとなります。考えて行動していますか?
 原生花園や登山道で花を見るのは結構ですが、平気で植え込みに踏み込む観光客。片足だけなら踏み込んでもかまわないなどと勝手なルールを作っている観光客もいるんじゃないかと見受けられます。歩いていいのは遊歩道まで。一歩でも踏み込めばその一歩が確実に草木を破壊します。その回復には何年、何十年を要します。最近は原生花園を見ても観光客が踏み込んで破壊した跡が1メートルに2・3箇所は確実に見えるんですよね。無惨なものです。よくよく見れば簡単に見えますよ。
 花の名前を覚えるのも結構なんだけど、それ以前に自然を見るのに必要な最低限の常識程度は身につけてから出てきてほしいですね、と思うことしきりな今日この頃です。

Chapter.2 あんたに責任、とれますか? − 喫煙について
 これは96年夏、北海道のとある原生花園で見たものです。最大手旅行会社某社のツアー客が原生花園を歩きながらこともあろうにタバコを吸っていました。日本最大手の旅行会社の客がこの程度のものなら海外でさぞかし恥さらしなことをやっているのだろうと思うと顔から火が出る思いです。

 何が問題か。先進国では公共の場でたばこを吸う人間など野蛮人です。確かにそれもあります。でもそれ以上の重大な問題もあります。
 どんなに火の始末をちゃんとしたとしても、もし万が一その火が原因で原生花園に火でもついたらあんたに責任とれますか? 金銭的補填は最低限のものですが、それで自然がもとにもどる保証があるわけでもないですし、だいいちあんたにその資力がありますか? その影響を少しでも考える知能があれば原生花園での喫煙など決してできないはずです。
 そこまでして無理してたばこを吸いたければ別に高い金を出して観光なぞに来なくともどっかの喫煙コーナーでたばこでも吸ってればいいのです。
 最近はご丁寧に「禁煙です」なんて書いてある原生花園もあります。でもどうも日本語を読む能力もないらしくそうした観光客はあとを絶ちません。書いてなくたって脳ミソちょっと使えばわかりそうなものですが、そうした知能すらないようです。

 およそ先進民主主義国と称する国では責任能力のない人間の行為は処罰らしい処罰もなく実質的に不問に付されています。はっきり言えば「貧乏人のやり得」国家です。もしどっかのちょっと過激な途上国で原生花園に国家的価値が認められている国があるとしたら、それをたばこ一本で焼き払ったあなたは即死刑でしょう。それで自然が戻るわけでもないですが、無責任行為の責任を最大限本人が取れる範囲で取るという仕組みが必要なのではないでしょうか。

 IOC(国際オリンピック委員会)の幹部が「木は切っても植えればもとに戻るが五輪は一度しかない」などと馬鹿げた発言をしたらしいですが、私は自然を破壊してまで五輪をやる価値はないと思います。五輪なんかどこででもできますし、五輪の精神のどこに自然破壊という概念があるのかも謎なら、自然の恩恵なしに冬季五輪が成立しないことを忘れた妄言としか思えません。そんなものを有り難がるからIOCがいい気になるのです。
 そんなイベントを有り難がるような愚かな風潮が、自然の価値をなにひとつ理解しないくせにいっちょまえに自然を観光しにくる質の悪い客を生み出しているのではないでしょうか。それを考えるとそのような観光客の発生は日本人の民度の問題だけでもないみたいです。

Chapter.3 他人の迷惑も少しは考えよう − 写真撮影編
 旅先でよく見かけるのが記念写真の撮影。撮影セットをかつぎ込んでの大がかりなものからグループの小規模のものまで様々。それ自体は旅の記念としておおいに結構なことですが、問題は他人の迷惑をなにひとつ考えることなく通路をはさんでアングルをとっている観光客、それでは飽きたらずにアングル取りに膨大な時間をかけ他の観光客に多大な迷惑をかける観光客などなど。ひどいのになると私有地に侵入しますからね。立派な犯罪です。

 あと見かけた事例としては列車の中や施設の中などで他人の迷惑などなにひとつ顧みずにストロボをたきまくる観光客もいました。特に夜行列車の中など迷惑千万です。あんたがたは楽しいかもしれませんがまわりには迷惑以外の何ものでもないという認識をろくに持たずに必要過剰にストロボをたいているのに至ってはその品位を疑う限りです。さらにそれを煽らんばかりに一緒になってストロボをたく某鉄道会社に至っては一般客への嫌がらせかと勘ぐりたくもなります。
 よく駅で列車を撮る観光客がいますが、特に走行中の列車にはストロボたいちゃいけないんですよ。安全運行に重大な支障をもたらします。まっとうな鉄道写真を撮る人間の間では至極常識なんですが。

 他人の迷惑を考えるなどというのは、別に旅先に限ったことではなく生活の常識としてこんなことは当たり前のことなのですが、それすらわかっていない観光客がいるのにはただただ呆れるばかり。多少の迷惑はお互い様とはいうものの、少しは他人の迷惑を考えるという文化が必要ですね。写真に限らず観光地や旅館などで馬鹿騒ぎする観光客とかもこの類。旅というのはハメをはずす場などと考えているのなら大間違いもいいところです。そういう面もあってもいいですが、社会生活最低限の常識を忘れることはあってはなりません。観光をするのも結構ですがそれ以前に人間として最低限のマナー程度は身につけてから社会を歩いてほしいですね。

 写真といえば、三脚を立ててカメラマン気取りな観光客をよく見かけますが、歩道の外には立てないでほしいですね。これも草木をもののみごとに破壊します。盗掘とレベル変わらないですね。本当にまじめに自然を撮るカメラマンは決してそんなことはしません。

Chapter.4 カネ出しゃ何してもいいと思ってる?
 日本の観光客というものはどうもマナーは最悪なようで、特にツアー客なんてのは最悪ですね。例は以下にもぼろぼろと出しますが、海外で何してるんだろうなんて考えただけで同じ日本人として恥ずかしいこと極まりなく私は外国なんぞ好きこのんで行きたいとは思いません。悪意なのかただのバカなのか知りませんが、成金民族ってやだねぇ。日本人の誇りとか真顔で言ってる政権与党のどこぞの政党も先にその支持基盤である*協とかの団体様のマナーを見直したほうがいいんじゃないっすか。まぁ心ある旅人もいますが少数ですな。
 その中でも特にいいたいのが、これ。「カネ出しゃ何してもいいと思ってる?」。彼らにとっては車やバスの窓からゴミ捨てるなんてのはまず基本。ガイドや宿の人、はては地元の人に罵声まがいの言動や低俗な言葉を浴びせたり。サービスと勘違いして何でもかんでも要求する客とか。それが格安ツアーだったらもう最悪。安い料金で来て食事が悪いとか怒ってる客とか。当たり前だよ。
 あなたはお客さまなんだから相応のサービスを受ける権利はあるわけだけど、何してもいいってわけじゃないよ。最低限の礼儀とか、相手を思いやる気持ちとか、そういうのは必要じゃないですかい。

Chapter.5 観光地はすべて観光客のために非ず − 地元にも暮らしがある
 観光地ではすべて観光客が優先、そんなふうに思っている人は多いのではないでしょうか。確かに明らかに観光客を意識したとしか思えない観光地や施設もあります。そこでは「お客様」として大きな顔をしてもいいのかもしれません。それが「産業」だからです。昔はそういう観光地がほとんどでした。でも最近は以前は誰も観光地として目をつけなかった場所が観光の場所として着目されるようになってきています。その例として北海道美瑛町を採り上げてみましょう。

 今なら美瑛の名を知らない人はそう多くはないものと思います。1996年の1年間で同町には126万人の観光客が入ったものと推定されているとか。単純計算で国民100人にひとりが実際に同地を訪れた計算になります。
 でもそのもとをたどれば、ただの農地にすぎません。その景色の美しさは観光目的で作られたものではなく農作業の結果として作り出されたものにすぎません。それがテレビコマーシャルや写真家の作品によって紹介され、観光の地としてその名を確かにしたものです。

 したがって同地で最優先されるべきものは観光客ではなく農作業です。同地には多くの観光客が訪れますが現地の収入にはなりません。ケンとメリーのポプラの木やマイルドセブンの丘のような景勝地を見るのもタダなら拓真館もタダです。宿泊施設もその収容能力はわずかで観光客の大半は富良野や旭川の施設を使います。莫大な税金を投じて作った立派なトイレや駐車場をもった展望台が町内に3カ所設けられていますがそれもタダです。収入と言えばせいぜい特産品の販売とかそんなものでしょう。同地の暮らしは農業で支えられています。もともとそのために開拓された土地ですし今後もそれはかわらないでしょう。

 にもかかわらずシーズンになると狭い農道に平気で路駐する自動車や大型観光バスがあとを絶たず農作業用の自動車やトラクターの通行のじゃまになっています。
 観光客にあっては平気で畑の中に入っていく者があとを絶ちません。秋が近くなると畑に麦わらロールがあらわれ、もの珍しさに「ちょっとならいいだろう」とか思うのかもしれません。でも「ちょっとならいい」わけはありません。
 畑はすべて私有地であり観光客の無断侵入など許されません。立派な犯罪です。美瑛を撮る写真家もまともな写真家なら無断で人の畑に立ち入ることは決してありません。
 とうとう畑のまわりには「畑の中に入らないで下さい」というラベンダー色のけばけばしい看板がたちはじめました。親子の木の真ん前にも立っています。有刺鉄線を張ってはどうかという人もいるみたいです。そうなると美瑛の景観はぶち壊しです。景観を見に来た観光客が自らその景観を破壊する結果につながるわけです。

 このような観光地には観光より優先されなければならない地元の暮らしがあります。それを尊重しつつ旅に出た私たちがその土地の良さを味わう、もしくは隠れた良さを発見する、そこに旅の醍醐味があるものと私は思います。そこから旅人がとるべき行動というのも自ずと明らかになるはずです。それになにひとつ思いを及ぼそうとしない観光客に観光する資格はありません。

 なおここで採り上げた美瑛の地について知りたい方は美瑛の丘の特集も参照して下さい。

Chapter.6 旅の意味って考えてる? − SLに乗って
 旅に来る人は何か目的があって旅してると思います。ただあなたのふるまいはその旅の目的に本当にあっていますか? ここでは私がSLに乗った時の実体験からお話ししましょう。あわせて自分勝手な観光客のふるまいも取り上げましょう。

 最近、観光の切り札にとSLを走らせる鉄道路線が増えてきました。まぁ毎度好評なようで、最近はどこもかしこもSLを誘致する雰囲気が出てきて有り難みも半減しているところですが。私もついでがあり、たまにはいいかなと思って行ってみました。
 北海道の深川−留萌を走るSLすずらん号に乗った時のこと。NHKの連ドラの影響で連日満員が続いたようです。私はひとり旅でしたが、隣の席に7人連れの家族があらわれました。頭の程度からして札幌か旭川かそのへんからやってきたのだと思いますが、こいつらはやってくるなり椅子を回そうとし、人の足に平気でぶつけるじゃありませんか。それでその次にさも当然というような態度で「回してもいいですかぁ?」だって。この無礼慇懃ぶりに頭に来たので断ってやったら逆ギレして罵声を浴びせてきました。他人がまったく見えていない図々しい観光客とはまさにこのことです。座席を回したければボックスで席取りゃいいんだよ。別にこっちに応じてやる義務もなし。

 不愉快な雰囲気の中、SLが動くわけですが、隣の図々しい家族連れだけでなくまわりをみてびっくり仰天。弁当喰ったり、くっちゃべって大騒ぎしてみたり。この人たちは何をしにSLに乗りに来たのでしょう。
 SLの醍醐味は今の列車とは異なる走りであり、音であるわけです。列車の動き始めなんかは全然違います。蒸気を溜めて加速につなげるあたり自然の力を感じるところです。しかしまわりのバカ観光客どもにそんな雰囲気を味わっている様子は全くなし。それだったら普通の列車に乗りゃいいんじゃないの? それじゃ満足できないんだったら列車に外箱かぶせてSLの絵を描いてドライアイスで煙を出せばいいでしょう。何のために沿線に煙害をふりまいてまでSLを走らせているのかわからん限りです。

 あなたが旅に出るには何か目的があるはずです。それを外した行動をしても何も思い出に残らないんじゃないでしょうか。あなたの旅の目的を振り返ってあなたの行動を見直してみましょう。そうしないと、どっかのツアー客みたいに思い出は土産物屋ばかりという笑えないことになりますよ。

Chapter.7 頭を使って旅を楽しく − 次の行程を考えた行動を
 観光シーズンに礼文島に向かう一番の船に乗ると、よくゲロ吐いてる観光客を見かけます。吐いてる人もいやでしょうし、見てるまわりはもっとイヤです。
 考えてみれば当たり前なわけで、朝早い船に乗るために睡眠不足のまま船に乗り込み、しかも船に乗る間際にたんまり朝食を食べて(ひどいツアー客になると船室で公然と臭いのぷんぷんする弁当を広げゲロ吐き予備軍を量産し、しかも船にゴミを捨てていく)、前夜に飲み会なんてきたらもう最悪ですね。ゲロ吐く要件がそろいまくってるわけです。
 旅の次の行動を考えて行動すればこんなバカなことには決してならないわけです。それが旅をより充実した楽しいものにするのではないでしょうか。
 ちなみに私は朝6時の船に乗る時は5時には朝食済ませます。腹が減らない程度の最低限度の量で。

Chapter.8 ペット連れの皆様へ − どこでも連れてっていいわけじゃない
 最近、ペット連れの観光客をよく見かけます。ピークシーズンになるとそのへんでペット同士がガンつけあって吠えあったりしています。最近の社会はペットに対しても寛容になったもので、ホテルとかでもペットとともに泊まれる施設も出てきました。北海道にもそうした宿泊施設があります。
 その手のペットOKの施設に行く分には勝手にしてください。しかしどこでもかしこでも見かけるようになると非常に考えものです。特に最近は観光施設でない普通の地域で車から降ろして放してるような観光客すらみかけます。これはかなり問題なのです。
 北海道では農村風景自体が観光資源のようになっています。しかしここではよそから来たペットは大敵です。ペットはどんなにきれいにしていても人間が運ばないような病原菌を運びます。その中には農業や酪農に致命的な影響を与えるものもあります。
 すでに北海道では空港など外から人が入ってくるところに消毒マットを置くようになっています。北海道に着いたあなたの足裏は実は気づかないうちに消毒されているのです。もちろんこれは病害の侵入防止です。
 ところがペットくん達はこんな消毒マットを通らずカゴに入れられて連れてこられるケースが多いはずです。するといくら人を消毒しても意味がないことになります。
 また北海道を歩いたペットくん達は逆に北海道にしかいない病原菌を運ぶこともあります。人間にはついていけなくてもペットくんにはついて行けるということはあり得ます。北海道の産業だけでなくあなたの生活を破壊するかもしれません。
 北海道に限らず観光地にはペットアレルギーの人も来ます。これらのことを考えあわせればどういう行動が必要かはわかるはずです。ペットを連れて歩くなとはいいません。でもペットによって行動が制約されるのはペットの飼い主の宿命です。それがわからない人には旅する資格もペットの飼い主になる資格もありません。


※このページも順次増強します。今後にご期待下さい。

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